日本人と英語

理解することと記憶すること

2021年6月6日 CATEGORY - 日本人と英語

英語関連書籍ではありませんが、以前に代表ブログで「イシューからはじめよ」という本をご紹介しました。

本書の著者は安宅和人というマッキンゼーのコンサルタントとしての経験もあり、またヤフーの元COOという経営者としての経験もあり、そしてイェール大学で脳科学の博士号を取得された科学者としての経験もあるマルチな経歴の持ち主です。

本書には、脳科学者としての知見を活かした、外国語学習に欠かせない「理解」と「記憶」について大変興味深い指摘がありましたので、この「日本人と英語ブログ」で取り上げたいと思います。

では早速ですが、該当部分を以下に引用します。

「大脳皮質の情報処理の中心となるニューロンは一つあたり数千から五千程度の神経間の接合であるシナプスを形成し、一つのニューロンが多くのニューロンとつながっている。ここで異なる情報を持った二つ以上のニューロンが同時に興奮し、それがシナプスでシンクロ(同期)したとき、二つ以上の情報がつながったということができる。すなわち、脳神経系では、『二つ以上の意味が重なり繋がったとき』と『理解したとき』は本質的に区別できないのだ。この結果、マイクロレベルの神経間のつなぎ、すなわちシナプスに由来する特性として『つなぎを何度も使うとつながりが強くなる』ことが知られている。例えてみれば、紙を何度も折ると、折れ線がどんどんはっきりしてくることに似ている。何度も情報のつながりを想起せざるを得ない『なるほど』という場面を繰り返し経験していると、その情報を忘れなくなる。当たり前のように思えるが、これは日常ではあまり意識されていない。きちんと意味のあることを相手に覚えてもらおうと思うなら、オウムのように同じ言葉を繰り返してもダメだ。『××と○○は確かに関係している』という情報が実際につながる『理解の経験』を繰り返させなければ、相手の頭には残らない。外国語を学ぶとき、単語帳だけを見ていても覚えられないが、様々な場面である単語が同じ意味で使われていることを認知するとその単語を覚えられる、というのも同じ話だ。」

非常に分かりやすく、また実際の私たちの生活経験に落とし込みやすい説明になっていると思います。

なぜランゲッジ・ヴィレッジでは、「ただ聞き流すだけ」の英会話教材をお勧めしないのか。

それは、「オウムのように同じ言葉を繰り返してもダメだ。」からです。

その一方で、なぜランゲッジ・ヴィレッジの「文法講座」が、「理解の経験」の提供に重点をおくことにこだわり、かつ各回で習った文法項目をそれまでに習った項目に追加してすべて使用した文章をつくらせることにこだわるのか。

それは、「『××と○○は確かに関係している』という情報が実際につながる『理解の経験』を繰り返させなければ、相手の頭には残らない。」からです。

また、なぜランゲッジ・ヴィレッジの「国内留学」が、文法知識がきちんと頭の中に整理されていることを入校の条件として提示した上で、圧倒的にそれを生活経験と結び付けさせる環境づくりにこだわるのか。

それは、「何度も情報のつながりを想起せざるを得ない『なるほど』という場面を繰り返し経験していると、その情報を忘れなくなる。」からです。

まさにこの「異なる情報を持った二つ以上のニューロンが同時に興奮し、それがシナプスでシンクロ(同期)したとき、二つ以上の情報がつながったということができる。」という「理解する」こと、そして「そのつなぎを何度も使うとつながりが強くなる」という「記憶する」ことの脳科学の知見からの意味合いを私が無意識の生活体験の中で体感していたからだと本書を読んだ今なら言えます。

これは、私にとっての「イシューからはじめよ」の実践であったというのは自画自賛しすぎでしょうか。(笑)

 

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