日本人と英語

知られざる「英語公用語」のパイオニア

2019年12月29日 CATEGORY - 日本人と英語

以前に、書籍紹介ブログにおいて「週刊東洋経済2011年3月25日臨時増刊号」をご紹介して、非ネイティブ英語の重要性について改めて考えてみました。

その中で、小さいですが企業の英語教育についての歴史において非常に重要で興味深い記事がありました。

それは、「日本における『英語公用語化』のパイオニアは楽天ではなかった」というものです。

楽天の三木谷社長が「英語公用語化」の構想を発表したのは2010年6月で、実際に実施したのがそこから2年の猶予期間を経た2012年7月です。

そこから遡ること10年以上、2000年10月の時点で、売上高およそ600億円の中堅企業が、すでに「英語公用語化」を実施していたのです。

その会社は、東京都品川区に本社を置くコネクターやスイッチなどの電子部品を製造するSMK株式会社です。

その記事では、SMK社が次のように、英語に対して非常にバランスが良いかかわり方をしている様が紹介されていたのが印象的でした。

「わが社のガイドラインでは、出席者の2割以上が希望すれば会議を英語で議事進行する、社内文書は原則英語で作成し、日本語などそのほかの言語は必要に応じて作成する—など、英語を使う場面を定めた。英語がある程度浸透すると、改めて浮かび上がったことがある。それは『英語はつまるところ道具に過ぎない。重要なのは論理力と専門性。特に日本語でロジカルに話せない人は、英語がどんなにうまくても開花しない。』という点だ。『英語力が重視される企業』と評価され、ネイティブスピーカー並みに話せる帰国子女らが応募するようになると、むしろ語学力以外の業務能力の差がより重要視されるようになった。」

また、この企業のウェブサイトやウィキペディアには「英語公用語化」の経緯については書かれていないようでしたが、その企業の採用ウェブページの中に次のようなQ&Aを見つけました。

Q:2001年4月から英語も公用語になったとのことですが、英語ができないと受験資格はないのでしょうか?
A:当社は、日系企業ですが、日本語に加えて英語も第一公用語になりました。これは、ビジネス環境において世界市場の単一化が進展し、あらゆる面でグローバルスタンダード化が加速している中で、日本語だけによるマネジメントでは、このメガコンペティション時代を勝ち抜くことができなくなったからです。『常に英語で会話やメールをしなければいけない』と思われる方がいますが、そうではありません。英語を使用する必要がある場合は英語を、日本人同士での打合せでは日本語で行います。あくまでも公用語は、日本語・英語の2つです。今は英語が得意でなくても、これから前向きに勉強する意欲がある方なら大丈夫です。
                                           
この企業には、ウェブサイトにこの「偉業」について大々的に顕示することもなく、またこのQ&Aを見ても分かる通り、その企業にとって必要なことを冷静に実行するという姿勢が見て取れるように感じます。

肩ひじ張らずに、それでいて自らが必要だと考えることを粛々と実行に移す、そして一時の勢いに任せず、それを長期にわたって維持する。

このようなバランス感覚こそ、「英語公用語化」には必要なのだと感じました。

 

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