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シンポジウム「どこへいく日本の英語教育」報告 その2

2018年10月31日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

先日、早稲田大学で開催されたシンポジウム「どこへいく日本の英語教育」の報告第一弾をお伝えしましたが、もう一つだけこのシンポジウムに関連してお伝えしたいトピックがありますので今回第二弾としてお届けします。

そのトピックは、阿部先生がご講演の中でご指摘された「身体・空間の英語」と「制度・システムの英語」の違いです。

阿部先生はこの二つのキーワードを使って、2020年の大学入試改革に伴う学校英語教育改革によって「文法訳読」中心の方法を排して「英語で英語を教える」仕組みに移行しようとしている現状の理不尽さを指摘されました。

まず、この二つのキーワードについて説明します。

(といっても、録音をしていたわけではありませんので先生の仰ったそのままの言葉ではなく、私が自分なりに受け止めた内容となりますので予めご了承ください。)

「身体・空間の英語」とは、自分の体とその延長線上の空間において使用する英語。すなわち、生活と有機的に結合している範囲の中で使用される英語。つまり、具体的な表現に関わるもの。

「制度・システムの英語」とは、その逆で生活からは切り離されて使用される英語。つまり、抽象的な表現に関わるもの。

従来の学校教育が行ってきたのは、明らかに「制度・システムの英語」の教育です。

なぜなら、基本的にマスプロ教育で行われなければならない学校教育では、生徒の生活と英語を融合させ「滑った、転んだ」という身体的な表現に触れさせる仕組みを作ることは困難で、意味のある成果を見込めないからです。

「身体・空間の英語」の教育を実施するためには、生徒の生活と英語を融合させるために、少人数で授業を行う必要がありますし、それらの具体的な言葉との出会いを豊富にするためには非常に長い時間その言語に触れさせなければなりません。

そのため、既にある程度自分の身体とその延長線上にある空間から独立して頭の中で抽象化できる年齢(中学生)になるまで待って、英語を抽象的に教える仕組みをとる方法を選択せざるを得ないのです。

この仕組みでは、英語のシステム(文法や最低限の単語)を理解させることができるため、それだけでは英語を話すことができるようにはなりませんが、人生のどこかの場面で必要となり、生活と英語が融合された環境におかれた場合には、比較的短期間に「身体・空間の英語」も身に付けることができます。

これが、「制度・システムの英語」を学んだけれど、英語が話せないと思っている日本人に対して、海外留学の何倍も密度の濃い「生活と英語の融合した環境」を与えることにより、超短期間のうちに「身体・空間の英語」を身に付けさせることができるランゲッジ・ヴィレッジのカラクリでした。

それに対して、今回の英語教育改革はそれを逆転させるものです。

小学校英語では、抽象的な思考ができない段階で「身体・空間の英語」に週1~2回という短期間だけ触れさせ、中学・高校では、「制度・システムの英語」ができていないのにもかかわらず、「英語で英語を教える」ことをこれまた週3回程度の限られた時間で行うことになります。

これでは意味のある成果など望めるわけもありません。

このように、阿部先生のご指摘は至極まっとうなものですが、実は私が今回お伝えしたかったのはこの二つのキーワードの考え方ということだけではなく、この二つのキーワードが、私が従来から指摘してきた二つのキーワード「しなやか英語」「ごつごつ英語」のコンセプトと全く同じだったことです。

「しなやか英語」と「ごつごつ英語」については こちら をご参照ください。

これら二つのコンセプトがあまりにも一致していたので、講演の最中から鳥肌ものでした。

しかし、それは不思議なことではなく、ものごとの本質について突き詰めて考えると結局は同じところに行きつくということだと思います。

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