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メンタル脳

2024年2月16日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

前回ご紹介した「残酷すぎる幸せとお金の経済学」では、「幸せの経済学」という学問が「経済学」+「心理学」+「倫理学」で表されるような人間の心の深いところにあるものを研究対象としつつ、それを定量的に把握し分析するものだということを学びました。

「人間の心の深いところにあるもの」、それはつまり「感情」に直接アプローチしてそれを定量分析するという非常に抽象度の高い研究で、この研究結果によって、私たちはなんとなく感覚的につかんでいた事象を数値によって客観的な「事実」として扱えるようにしてくれています。(私個人としてはその結果に100%の信頼をおけているわけではありませんが)

本書を読む中で、しだいに「人間の心の深いところにあるもの」=「感情」というものをもっと深く理解したいという欲求が高まった結果として手にしたのが以前このブログでご紹介した「スマホ脳」の著者アンデシュ・ハンセン氏の「メンタル脳」という本です。

まず冒頭で、現代人の「感情(メンタル)」が以下のような「人類史上最悪の状況」となっている現実を突きつけています。

ユニセフが警告を発し、アメリカ政府が「国家的危機」と言及していますが、著者の母国スウェーデンではここ20年、不眠で受診する10代の若者が10倍に増えており、日本でも高校生の30%、中学生の24%、小学4~6年生の15%が中等度以上のうつ症状を訴えているとの調査結果があるそうです。

なぜ、こんなにも多くの現代人、特に若者が「感情(メンタル)」の問題を抱えなければならなくなっているのか、一言で言えば、前回の「スマホ脳」で見たように、人間の脳が人類の歴史の99.9%の期間の環境に最適化され、「命にかかわるような大きなストレスを『時々』受けることに対応する」ように進化してきたので、たった0.1%未満の例外的でしかない現代の環境では「誤作動」ないしは「過剰反応」が引き起こされまくっているからというのが答えになります。

本書では特に脳の仕組みの内、「感情(メンタル)」に重きをおいて説明していますので、以下興味深い点を掻い摘んで引用します。

まず、そもそも「感情」とは何かについて。

感情は、脳の中でも最高の機能を持つ「島皮質(とうひしつ)」の中において、知覚から入ってくる「外界からの情報」と脈や呼吸など「身体の中から受け取る情報」とが出会い溶けあった結果を、脳が「説明」し「まとめた」ものです。

例えば、崖っぷちに近づいたら、外界からの「崖の映像という視覚情報」と身体の中から受け取る「心拍数が上がっているという情報」との二つの情報をまとめて、「怖い」という感情で説明をすることで、崖から引き返させます。

引き返すと、その「崖の映像がなくなった視覚情報」と「心拍数が普通に戻ったという情報」を「安心」という感情でまとめます。この恐怖とご褒美によって「崖から落ちて死ぬ」ことを脳が回避しているのです。

つまり、このように脳は「感情」を私たちを生かしておくための道具として使っているわけです。

また、「視覚情報」が届くまでにはある程度時間がかかるので、例えば「車にぶつかりそう」などといったもっと強い刺激である場合には、そのシグナルが届く前にその途中に存在する「扁桃体」という警報機が作動し、それらの感情を作らずとも、「後ろに下がる」という行動を起こさせます。

ちなみにこの警報器はとても敏感で、「感情」と同様に私たちを生かしておくためにかなり頻繁に作動するようになっています。

この「感情」や「警報シグナル」はもともと、敵対部族や猛獣に襲われたりするような「命にかかわるような大きなストレスを『時々』受ける」ことに対応するという人類の歴史の99.9%の期間で当たり前だった環境に適応するように作られています。

その結果起こりうる「不安」や「うつ(引きこもりを含む)」は自分の体を脅威から遠ざけ、慎重に行動選択をする時間や機会を確保するという防御システムの発動なのです。

一方で、現代の環境では、実際にはそのような危険はほとんどない代わりに、世界中の悪いニュースを「数分おき」にスマホで通知されたり、狭い電車に「朝晩何時間」も押し込まれたり、受験や営業の成績のプレッシャーを「四六時中」突きつけられたりと、「命にはかかわらない小さなストレスを『慢性的』に受ける」ことになります。

もちろん、人間の脳は人類の歴史のたった0.1%の期間しかこの変化後の環境にさらされていないので、当然仕様は昔のままです。

そのため、現代人の警報器は鳴りっぱなしとなり、それに対する体の反応として冒頭で明らかにした本来は大切な防御システムなはずの「不安」や「うつ(引きこもりを含む)」が多くの人々に慢性的に発現し、「人類史上最悪の状況」を作り出してしまっていると考えられるのです。

本書では、精神科医である著者が以上のような詳細な解説とともに、そのような「人類史上最悪の状況」への対処の仕方についても非常に分かりやすく提示してくれています。

 

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