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アメリカで進むチップのデジタル化

2023年6月16日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

2023年4月26日「アメリカでも『チップ疲れ』?」という記事にて、「チップ」の習慣について取り上げて、欧米では店から労働者に支払われるべき報酬が、そもそも「不当(他の業界と比べて)」に安くても許容されてきたという社会的不均衡を「チップ」という形で無理やり調整してきたにすぎないという事実に触れました。

そしてその記事の中では、そのような不公正なチップ習慣を改めるため、「一般労働者の最低賃金を下回るチップ制労働者の報酬体系を変えるための運動」が盛り上がり始め、実際にワシントンDCではチップ制労働者に対しても最低賃金が支払われることが決まったというニュースも取り上げていました。

ところが、先日(2023年6月6日)の時事通信社のウェブ記事に、その動きに逆行するというか、むしろできるだけ是正すべき「チップ習慣」を拡大的に利用するような動きについて書かれていました。

以下、記事を要約の上引用します。

「チップは、19世紀の南北戦争後に奴隷から解放された黒人労働者を低賃金で雇うために導入された仕組みが始まりとされ、もともと低賃金で働くウエーターらの生活を支えるために根付いた制度だが、最近はファストフード店やコーヒーショップといった、(本来チップとは無縁のはずの)接客をほとんど伴わない業態でも電子的に支払う『デジタルチップ』の導入が拡大。クレジットカード払いの端末に『チップを選んでください』と表示され、『5%』から『20%』までのほか、『その他』と『なし』セルフレジが要求するパターンも登場しており、客側の困惑も広がっている。こうした積極的にチップを求める慣行は、キャッシュレス決済の普及に加え、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた飲食業界を支えようという機運を背景にじわじわと浸透。飲食店のみならず一部の食料品店やクリーニング店のほか、まったく店員との交流がないようなセルフレジの店でも取り入れるようになってきているという。しかし、このような業態の労働者はこの制度の対象外だ。例えば、ニューヨーク市内のファストフード店の最低賃金は、他の労働者と同じ時給15ドル(約2100円)。スターバックスも昨年、全国で時給を最低15ドル(実際の従業員平均では約17ドル)にまで引き上げた。また、米国内のアップルストアで初めて労組を結成した東部メリーランド州の店舗の従業員が、賃金の増額とともに客からチップを受け取れるようにする制度改正を要求したことが報じられている。」

この問題は想像以上に大きな問題だと私は思います。

なぜなら、すでに守られているはずの業界のみならず、世界で最も成功しているアップルのような会社までもが「チップ」を導入してしまうようなことになったら、前回の記事で見たような「チップ」を言い訳に最低賃金の枠外で人々を働かさせてきた業界の問題が、ようやく社会問題として取り上げられ、是正に向かい始めたと思ったところに、突然冷や水を浴びせるようなものだと思うからです。

この件に限らず、すべての社会問題が正攻法で解決されることを望みます。