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ティール組織

2024年1月16日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

以前にリクルートの創業者 江副浩正氏の人生を描いた「起業の天才」をご紹介しましたが、その中で、彼が作ったリクルートは若い社員たちが圧倒的な当事者意識をもって「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変える」ことを前提として成長してきた組織であり、その特徴は2018年にベストセラーとなったフレデリック・ラルーの「ティール組織」そのものだと書かれていました。

実はこの本は結構な期間、積読状態となっており、このことがきっかけで晴れて脱積読と相成りました。

このように、いい本がいい本を呼び寄せるということが、読書の醍醐味だな~とつくづく思います。

ただ、読み始めてすぐに感じたのは「な~んだ」という脱力感でした。

というのも、「ティール組織」のティールとは何かそのような組織形態を形容する英単語かと思っていたら、なんと「コガモ(顔が青緑色の鴨)」を表す英単語「teal」からとっているようなのです。

それではなぜリクルートのような構成員が当事者意識をもって活動することで成長する組織のことを表すのかということになるのですが、これが、(人類の発展段階をもとにした)組織の発展段階を赤(レッド)から青緑(ティール)までの色のグラデーションに見立てて整理したら、そのような組織が最終形態としての青緑(ティール)に分類されたからというのが答えになります。

ちなみに、レッド組織(赤)、アンバー組織(琥珀色)、オレンジ組織、グリーン組織、ティール組織(青緑)という形で5種類の分類がなされています。(お恥ずかしながら、tealのみならず、amber=琥珀・琥珀色という英単語も初めて知りました。)

ただ、その内容は非常に深いものであり、十分に納得感のあるいい本でした。

ここでは、ざっくりですが、赤(レッド)から青緑(ティール)までのそれぞれの組織形態の説明をしたいと思います。

◆レッド組織(赤):圧倒的な力を誇示することで他の構成員を無理やり従わせ、対人関係を力で維持する組織。そのため、権力構造は常に流動的な組織形態を採用している。例えば、ギャングやマフィアなど。(つまり、現在では合法的には存在しえない組織となっている。)

◆アンバー組織(琥珀色):長期的視点に立った事業を運営するのに最適な組織。ただ、それは世界は不変で過去にうまくいったことは将来もうまくいくという前提に基づいて機能するため、権力構造は厳格で硬直的。とはいえ、現在でも先進国における大半がこの組織形態を採用している。例えば、カトリック教会や軍隊など。

◆オレンジ組織:基本的にはアンバー的なピラミッド構造を残しながらも、複数の部門や職種にまたがる横断的な機能でそれに風穴を開け、メンバー間のコミュニケーションのスピードを高め、イノベーションを促す仕組みを持つ組織形態。例えば、ナイキやコカ・コーラ社などの現代のグローバル企業など。

◆グリーン組織:ルールは存在せず、共有された価値観に基づいて様々な見解を集めた上でメンバーの総意による決断を目指すボトムアップのプロセスを基本とする組織。例えば、サウスウェスト航空やベン&ジェリーズ社など。

(ここまでの全ての組織形態の意思決定の基準は外的なもの、それはグリーン組織の「共有された価値観」を含め、構成員が自分自身で決めたものではないという意味でそうなっている。)

◆ティール組織(青緑):リーダーは存在せず、現場においてメンバーが必要に応じて意思決定を行う組織。メンバーそれぞれが組織の社会的使命を果たすために自分に何ができるのかを理解し、実際に目標達成のための行動をとることができるため、メンバーは自主的に成長をしながら活動する組織形態。例えば、前出の(創業直後の)リクルートやパタゴニア社など。

(ここで初めて、「この判断は正しそうか?」「私は自分に正直になっているか?」「私はこの世界の役に立っているか?」など意思決定の基準が自分自身の心=内的なものへと移行する。その意味でいうと厳密にはリクルートはそれにあたるかどうかは疑問かも。)

私が大学生だった20数年前には、「経営学」の議論の中心は、専らアンバー組織からオレンジ組織にいかに脱皮できるかについてだった気がします。

その時に、大学という場で企業の価値観や社員の自主性を議論しようとしていたのは、私の恩師 村田先生くらいのもので、そんなものは経営学ではなく、道徳や倫理の分野だと思われていたようでした。

しかし、本書で明らかにされているように今では、社会的責任にまで本気で気を配る「グリーン組織」にとどまらず、人間の自己実現にまでに配慮する「ティール組織」についてまで、このように大々的に議論する時代になったことを知り、何とも隔世の感を禁じえません。

ただ、それでも我々の組織形態に関する理解の幅が広がったとしても、決して誤解してはいけない事実があることを本書は伝えています。

最後に本書よりそのことが良くわかる言葉を引用して終わります。

「青年は幼児に比べて『よい』人間というわけではない。それと同じように、高い発達レベルにいるほうが本質的に『良い』わけでは全くない。けれども、青年のほうが幼児よりも多くのことをできるという事実は残る。というのも、幼児よりは高度にものを考えられるからだ。どのような発達レベルでも、そのレベルが目の前の仕事に適切かどうか、ということなのだ。(ニック・ペトリ)」

 

 

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