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突然豹変する中国の「政治」と「愛国心」

2023年7月27日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

前回、「家計簿からみる中国の今ほんとうの姿」という本を紹介しました。

私が「中国」という国に関して従来からずっと気になっているのは、「羽生結弦選手の驚異的な人気」などにみられる日本に対する極端な「愛着」と「日本企業ボイコット」などにみられる突然の「豹変」のアンバランスさはいったい何が原因なのかということでした。

本書にはそのことについてかなり具体的な説明がありましたので今回はこのテーマで書きたいと思います。

極端な「愛着」と突然の「豹変」の具体的な例としては、「小京都」問題が非常に分かりやすく印象的でした。

「小京都」とは、2021年夏、中国東北部・大連に東京ドーム13個分の敷地に約1140億円の資金を投じて作られた模擬都市のことです。

これは、「観光公害」という言葉さえ作り出されるほどに中国人観光客のお気に入りだった「京都観光」がコロナ禍によって完全に不可能となってしまったために、中国国内にてそれを疑似体験できる場所として作られたのでした。

300戸の住宅や別荘と90件の店舗で構成され、多くが日本の企業の協力で本格的な作り込みがなされ、オープンと同時に大盛況となりましたが、わずか1週間で営業停止に追い込まれることになりました。

その理由は、あまりに「日本」が前面に出されすぎ、なおかつそれが大人気となったことで、ネットで「日本文化の侵入」などの批判が集中したことが理由でした。

そして、その突然の営業停止から半年後、「小京都」は名前を変えて「金石万巷」として再スタートしましたが、町に展開する日本料理店も、日本を前面に出さないような店名にするよう指導を受け、例えばカレーパン店「神戸異人館」は、ラーメンの提供もあったので「味噌拉麺」という店名になり、日本以外の国も出店するようになり、北朝鮮の「平壌冷麺」やスペイン、イタリア、ロシア、モンゴルなどの料理店が並ぶようになってしまいました。

以下の記事と動画をご参照ください。

ちなみに、この「金石万巷」という名前ですが、辞書で調べましたがそのものズバリの訳語が出てきませんでしたので、何とか頑張って訳してみると「金石(この施設が位置する金石灘地区)何でもストリート」くらいの意味となるので、上記の変更内容を見て「なるほど」と納得しました。

このような極端な「愛着」から突然の「豹変」が起きた複数の事例を注意深く見てみると、「愛着」の極端さがあまりに大きくなりすぎるとその裏返しに少数の強烈な「反感」が現れ、それがネットによってものすごい速度で増幅されて行くという共通点があることに気づかされます。

そして、中国政府がその「反感」に対してある意味の「お墨付き」を与えることで、「小京都」事件にみられるようなある日突然、手のひら返しが起きるというのです。

共産党一党独裁の政治体制である中国は、民主主義国家に比べてずっと「世論」に関係なく政策を自由に展開できるのではないかと私たちは思ってしまいがちですが、実は、一党独裁の政治体制だからこそ「世論」に常に神経をとがらせ、民衆の心の動きが政府のコントロールを超えてしまう前に強制的に遮断する必要があるというのが著者の見立てでした。

つまりは、中国政府は、国際的な軋轢よりもずっと内政不安を恐れているのだということです。

非常に納得感のある見方だと思いました。

 

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