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一見理不尽に見える学術論文の世界

2022年12月7日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

本日(2022年12月7日)の読売新聞のコラムに「学術誌 GAFA化」というコラム記事があり、少し目を通したら、「学術誌」の仕組みがどうも理不尽というか何か納得できないような気がしてきて、結構長い特集でしたが最後まで読んでしまいました。

まず、この記事を以下に要約引用します。

「科学技術の分野で、研究者たちに圧倒的な影響力をもつ出版社がある。科学誌『ネイチャー』で有名なドイツのシュプリンガーネイチャーとオランダのエルゼビア、米国のワイリーだ。この3社が発行する様々な学術誌に、世界の主要な科学論文の半数近くが掲載されている。大学の教員や学生らが研究を進めるうえで、学術誌で多くの論文を読み、最新動向をつかむことは欠かせない。個々の研究者の評価も、本人が書いた論文の数や、他の論文に引用された回数を示す『被引用数』が重視される。研究者にとり著名な学術誌に自分の論文がどれだけ掲載されたかが重要になっている。近年の学術誌はネット上の電子版が中心だ。3社はデジタル化によるデータを活用する。IT業界の巨人たちGAFAに似た存在といえる。学術誌の収入源の大きな柱は、大学などが支払う『購読料』だ。文部科学省によると、全国の大学が2020年度に支払った学術誌の購読料は電子版だけで326億円。10年前の1.6倍に増えた。最近は、学術誌の新たな収入源が拡大している。論文を載せた著者が支払う『掲載料』だ。出版社は掲載料で収入を得て、電子版で読むのは誰でも無料(オープンアクセス、OA)という手法が目立ってきた。OAの方が広く読んでもらえるため、高い掲載料を払ってでもOAにする研究者が相次ぐ。研究者の間には『立場の強い出版社に、科学技術予算が吸い取られている』との不満が渦巻く。」

お恥ずかしながら、私は「学術論文」の仕組みを今までほとんど理解しておりませんでした。

というのも、論文は大学などの研究機関(や研究者)が研究費を掛けて発見した成果などを世の中のために発表するものですから、その作成者たる研究機関などは当然の「権利」として、その他の論文に自由にアクセスできる権利を持っているのではないかと想像していました。

この記事では「学術論文のGAFA化」と言っていますが、むしろグーグルの検索エンジンの「ページランク」の仕組みは「学術論文の引用」の仕組みからヒントを得てこの世に誕生したというエピソードを以前にこのブログで紹介していたことからも、そのような権利があって当然ではないかと思うからです。

しかし、学術論文のプラットフォームは、閲覧するにもお金がかかるばかりか、最近では作成者自らが掲載費を負担して掲載してもらうという現実の仕組みをこの記事で初めて知ることとなりました。

そこで遅まきながら、学術論文の仕組みをもう少し詳しく調べてみることにしました。

すると、ウェブサイトの検索エンジンとは異なり、学術論文の雑誌掲載には圧倒的な雑誌側の「努力」が必要となるという事実が見えてきました。

それが「論文掲載」に関わる次のような「査読」という工程です。

「査読は査読者と呼ばれる専門家が論文を読み、検証、評価のうえ雑誌に掲載するかどうかを決定するものです。査読の役割は論文の質を評価し、投稿先の学術雑誌に見合うものかどうかを判断するものです。従って査読を行うことは学術雑誌の質を保つ役割も果たします。まず論文が雑誌に投稿されると、主に雑誌の編集者が論文に目を通し、内容を把握します。その後、その論文を読むのに最適な人材に査読を依頼します。査読者は担当の論文を読み、検証し、学術雑誌に掲載しても良い論文か否かを判断します。最後にMajor CommentsとMinor Commentsを論文著者に送ります。Commentsには研究や結果など論文の内容に関するものから、英語で書かれた論文における英文の間違いや表現の訂正など幅広いです。雑誌に掲載される論文は査読者に『採録(Accept)』と判定されたものです。」

すなわち、「学術誌」は、数多くの研究者が執筆した論文が本当に価値がある論文かどうか判断するという、大いなる責任を果たすためにそれなりのコスト(*)を負担しなければならないのです。

(*査読者自体は基本的にボランティアで行われるものですが、その論文に適する査読者を手配するためにジャーナル・エディターと言われる学術誌の編集者や膨大な論文を管理するための事務管理にかかわるスタッフの人件費など)

かなり前に「STAP細胞」に関する記事で書いたように、「学術誌」によるこのような努力は絶対に必要なことであることは十分に理解できます。

世の中に数多存在するウェブページを幅広く発見分類することを完全にコンピューターによって行い、そのコストを広告という収益によって賄うものであるというグーグルの検索エンジンと同一視はできません。

今回、この記事のおかげで学術論文の世界を少しだけ知ることができ、そのような仕組みでなければならないことも理解をしましたが、一方で研究機関及び研究者の負担がこれからも増加し続けるようなことになると、もう一歩踏みこんだ解決策を世界規模で模索する必要性も出てくるような気がします。

 

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