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家計簿から見る中国の今

2023年7月26日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

先日(2023年6月21日)、「中国の研究力が世界一に」という記事にて「中国が自然科学分野でアメリカを抜いて世界第一位になった」とのニュースを確認しました。

もはや、日本は中国を見下すどころか、その彼我の差は圧倒的なものとなり、あれよあれよという間にアメリカに匹敵する覇権国家に確実に近づいているという認識をせざるを得なくなっています。

ただそれでも、「国家」としての比較ではそうかもしれないが「国民」の平均レベルで圧倒的な差はつけられてはいないはずだとの認識を多くの日本人はぬぐい切れないでいるように思えます。

そこで、中国の「国民」、特に中間層の実態について理解するための本はないかと探したところ、以前にもこのブログで取り上げた「中国人が上司になる日」の著者である青樹明子氏の「家計簿から見る中国 今ほんとうの姿」を見つけ、読んでみました。

まず、本書より具体的な数字を確認したいと思います。

1990年から2020年までの30年間におけるGDPの変化です。

アメリカは3.5倍の2,335兆円、日本は1.5倍の525.9兆円に対して、中国は37倍の約1628兆円に成長しています。

日本の停滞と中国の成長に目を奪われがちではありますが、中国は人口が14億人もいるので国全体で比較してもその実態は見えてきません。

そこで、注目すべきなのがいわゆる「中間層」のボリュームとその収入ですが、中国には月の給料収入2000元~1万元(3万8千円から19万円)の「中等収入者」という概念があるのですが、現在4億人に達していると言われています。

一見するとボトムが4万円に満たないので、少々見劣りする気がしますが、実は中国の以下のような事情を加味しないの実態を見誤ってしまう恐れがあります。

中国は副業禁止の多い日本とは異なり、給料収入以外の副業や投資などからの収入を得ることが一般的であり、なおかつ女性の社会進出の割合も高いため、多くの世帯収入の実態は8万円~40万円となり、決して日本の中間層と比べて劣るものではありません。

つまり、日本の中間層と同等の収入レベルの人間が4億人いると言っても過言ではないということです。

それに加えて見逃せないのが、日本と中国の消費性向の違いです。

特に、1990年代以降生まれの若者たち(総人口の24%)の消費意欲は驚異的で「月光経済」と呼ばれます。

もともと「月光」という言葉は、約40年前に改革開放政策が提唱された頃、お金儲けのために昼は工場などで働き、夜は個人営業の屋台を出したりしてより多くの生活費を稼ぐような労働形態が多くなり、彼らに対して「夜も働く」という意味で「月光族」といった具合に使われていました。

ところが、1990年代以降生まれの若者たちが、給料を月末に使い切るだけではなく、クレジットカードで翌月の収入にまで越境することをいとわない消費性向を示しており、むしろ消費が仕事で収入を得ることへのモチベーションでもあると考える世代である彼らを「月光族」と呼ぶようになりました。

中国語の「光」には「きれいさっぱりと何も残っていない」という意味があることから「月給をきれいさっぱり残さず使い果たす」という彼らの「消費性向」を指す言葉として使われているようです。

クレジットカードで翌月の収入にまで越境することに躊躇がないことが良いかどうかの議論はあると思いますが、「スマホ一台あればもう何もいらない」というような現代の日本の若者と比べて、少なくとも「経済を回す」という意味では「月光族」のそれがプラスに働くことに間違いありません。

一方で、中国と言えば極端な「お金持ち」が多いイメージを持たれている人が多いと思います。

ただ、本書は基本的に「中間層」の経済に対するインパクトを中心に書かれていますので、「富裕層」の全体に占める割合など具体的な数字は見つけられませんでした。

そこで調べたところウィキペディアにて以下のような意外な事実を見つけました。

まず、世界における富裕層の定義から。

「富裕層」とは、保有資産額100万ドル以上の世帯、「超富裕層」は保有資産額3000万ドル以上の世帯とされる。

私たちが中国の富裕層と聞いて想像するのは「超富裕層」のほうだと思いますのでそちらの世界ランキングを以下に示します。

1位:アメリカ合衆国101,240人、2位:中国29,815人、3位:日本21,300人、4位:ドイツ15,435人、5位:カナダ11,010人、6位:フランス9,810人、7位:香港9,435人、8位:イギリス8,765人、9位:スイス7,320人、10位:インド6,380人

香港を加えた中国の人数は3万9250人で、あくまでもアメリカに次ぐ2位ということで確かにすごいことはすごいのですが、私は個人的に日本の21,300人が3位というのに非常に驚きました。

中国の4億人の「中間層」のボリュームを考えれば、超富裕層の約4万人というのは中間層の0.01%であり、かなり控えめのような気がします。

一方で、ずっと世界最大と言われてきた日本の中間層の割合は1994年の67%から2009年の59%(統計的に最新)になっていますので、日本の中間層は約7000万人となり、超富裕層の2万1300人というのは中間層の0.03%で、これだけで見ると日本のほうが中国よりも3倍も格差が大きいという見方ができるような気がします。

このように見てくると、私たち日本人は私たち自身が思っている以上に、彼の国を過小評価し、自国を過大評価しがちであることに気づかされます。

他人の心配よりも自分の心配をしたいと思います。

 

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