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普通の労働社会へ

2019年5月13日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

先日(2019年5月10日)の日経電子版に「公務員定年、欧米は撤廃・延長 日本も65歳へ上げ検討」との記事がありましたのでご紹介します。

「政府が国家公務員の定年の引き上げを検討している。現在の60歳から段階的に65歳まで延長する方針だ。政府は社会保障制度改革の一環として「生涯現役社会」を掲げている。高齢でも意欲さえあれば働ける社会にするため、まず国家公務員の定年を延長し、民間にも広げる狙いだ。欧米の国家公務員制度をみると、日本以上に定年を延長したり、定年そのものを撤廃したりする例が目立つ。ドイツとフランスはそもそも日本より高い65歳定年だった。公的年金の支給開始年齢の引き上げにあわせ、両国とも定年をさらに延長する予定だ。ドイツは12年から段階的に上げ始め、31年に67歳にする。フランスも16年から上げ始め、22年に67歳にする。英語圏の国家公務員では定年そのものの廃止も多い。米国は1967年に成立した年齢差別禁止法で、雇用の場での年齢による差別を禁じた。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどでも定年は廃止済みだ。英国は年金の支給開始年齢を2046年までにいまの65歳から68歳に引き上げる予定でそれにあわせて定年制を10年に廃止した。」

少なくとも日本においては、「定年制」と「年功序列型給与」は終身雇用という仕組みの上にセットで成り立っています。

それは、具体的には入社当初については、最低限生活できる「初任給」からスタートするのは仕方がないにしても、そこから定年まで継続的に昇給して最終的にペイするのを待つことを前提としたものです。

ですから、働き盛りで能力的にも最も脂ののった時期には、その評価に合わない低い水準の給与に甘んじなければならない一方で、定年間際ではそれほど貢献しなくても高い水準の給与を受け取れるという、労働力の取引に市場原理が働かない仕組みだと言えます。

また、その定年を迎えた時から、一切の収入を労働によって受けることができなくなるというものです。

この明らかにバランスの悪い仕組みが成立することを可能にしたのが、定年後の「年金」です。

しかしながら、この「年金」の受給額も支給開始年齢も条件は悪化の一途を遂げ、最終的にはこの仕組み自体の存続すら多くの国民が不安視するような状況になっています。

これが、当該記事のようなことを引き起こした原因だと考えられるわけです。

この記事にあげられる変化とは、すなわち、若い時からその時点での能力の評価に一致した報酬を受け取り、年齢とともに徐々にその評価は落ちていったとしても、常にその時点での評価に見合う報酬を受け取り続けることができる「労働社会」への変化だと思います。

そして、よく考えてみればこれは、普通の「労働社会」の到来と考えられるように思うのです。

「年金」は、長期的な契約の中での仕組ですから、簡単には廃止できるようなものではありません。

ですから、共存させていかざるを得ないと思いますので、その労働力の評価を正当なものとするために、労働による報酬を受け取りながらも、年金を満額受け取ることができ、その人の労働意欲をそぐことのない仕組みの構築も併せて行う必要があるでしょう。

そして、最終的に、「年金」を公平感のある形で廃止し、働く能力がある人は労働力に対する「報酬」で生計を立てつづけ、その能力が不幸にもなくなってしまった人に対しては、福祉によって守るという社会、すなわち記事の中にもある「生涯現役社会」を実現せざるを得ないような気がします。

「長期的な契約」に基づく仕組みを変えることは容易ではありませんが、持続可能性がないことが確実なものであれば、いつかは必ず改革しなければならないと思いますし、それは時間がたてばたつほど難しくなることは間違いありません。

 

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