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最後の海賊

2023年9月3日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

私は今まで何度もこのブログにおいて楽天の三木谷社長関連の書籍を紹介する記事を書いてきました。

その中で一貫しているのは彼の経営者としてのスケールの大きさに対するリスペクトの視点です。

ですが、楽天の携帯業界への参入の経営方針をめぐって、それがあまりに無謀で出口の見えない泥沼にはまっているとの批判が大勢を占めるなど、最近どうも三木谷社長に対するマイナスのイメージが世の中で増長しているような気がしていました。

そんな中で、「最後の海賊」というタイトルの彼に関する最新の書籍が出版されました。

このタイトルには、以前このブログでもご紹介した出光興産創業者出光佐三氏(のみならずホンダの本田宗一郎氏やソニーの盛田昭夫氏など)の危険を顧みずに「誰もやったことのない新しい事業」に社運を賭ける生きざまを体現するような経営者が現代日本にはほとんどいなくなってしまい、楽天の三木谷社長がその最後の一人だという意味が込められています。

つまりは、上記のように「あまりに無謀で出口の見えない泥沼にはまっている」と一般人が評価せざるを得ないような楽天の携帯業界への参入には、携帯電話という単なる寡占業界に第四の勢力として加わりたいということ以上に、「誰もやったことのない新しい事業」への挑戦の意味があるはずだということなのです。

以下に、この挑戦の概要とその意味合いが分かるように本書より要約引用したいと思います。

「楽天グループは楽天市場、楽天カードそして楽天銀行など稼ぎ頭が稼いだ利益を全てを携帯事業につぎ込みながらも4期連続最終赤字を計上しており、経営難すらささやかれるあり様だ。そしてその損失のほとんどが通信ネットワーク構築のための設備投資による。だが、それは既存三社がとっくにやり終えていることを遅ればせながらやっているにすぎないとは考えるべきではない。実は、楽天は『楽天シンフォニー』という子会社で世界初の『完全仮想化ネットワーク(Open RAN)』の実用化を実現し、自らの設備投資はもちろんのこと、この技術をパッケージにして海外の通信会社に売り込んでいるのだ。これは従来の通信ネットワークの構築が、基地局に高価な専用機器(ハード)を使って行っていたのに対して、汎用サーバーとソフトウェアだけを活用して行おうとするものだ。例えるなら、かつてワープロというハードを買わなければタイプできなかったものが、どのPCでもワードというソフトを入れさえすれば可能となるのと同じことだ。これによってネットワークの構築は30%安くなり、運用管理コストは40%安くなる。もちろん、通信大手のほとんどがこの技術に取り組んでいたが、物理的にすさまじく困難で、実用化はまだまだ先だと思われた。三木谷はだれもが躊躇するこの技術の実用化のための説明を受け、『面白い』と思ったとたん、世界各国からこの技術の精鋭を集めプロジェクトを前に進め、世界で最初に成し遂げてしまった。猛烈に情報を吸収した後、それを頭の中で組み立て、『こうすればこうなる』『こうなれば次はこうなる』と囲碁や将棋の達人のように先を読むことでこの技術の構想を説明した当の本人でさえビビるような経営判断をしてしまったのだ。そして、実際に2021年と2022年、楽天モバイルは、携帯電話の分野で最も革新的な事業を成し遂げた企業に贈られる『グローバル・モバイル賞』を2年連続で受賞した。日本の携帯電話料金を大幅に引き下げた完全仮想化技術に対する評価はなぜか海外でのほうが高い。(一部加筆修正)」

もちろん、この挑戦はまだ現在進行形のことであり、最終的に成功するかどうかは分かりません。

しかし、少なくともこの目的が、単なる既存のパイを奪いに行くようなセコいものためではなく、通信世界における「アポロ計画」と呼べるような世界にとって決定的に意味のあるものであることが分かり、ますます三木谷社長のスケールの大きさを再認識することができたことが最大の収穫でした。

 

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