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本来あるべき「謝罪会見」の形

2023年10月22日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

昨日(2023年10月21日)、これほど経営者としてが学ぶべき点が多い会見はないと思えるような「謝罪会見」を見ました。

それは、全国で500人を超える食中毒患者が発生した弁当の製造会社「吉田屋」の吉田広城社長の会見です。

この事件の概要は次のようなものです。

「青森県八戸市の駅弁メーカー『吉田屋』の弁当を食べた人が相次いで体調不良を訴えた問題で、29の都道府県で521人が食中毒と確認された。食中毒と確認された人のうち11人が入院したが、いずれも退院していて、重症者はいない。保健所は今後、改善報告書の提出を吉田屋に提出させることで営業停止を解除するとしている。」

では早速、この会見を見てみましょう。

まず、全体として涙ながらの説明ではありながらも、丁寧かつ必要な情報はすべて網羅している非常に分かりやすいものでした。

以下に、吉田社長の会見の要点をまとめます。

① 駅弁の製造販売の要諦は何よりも時間との闘いであり、すべての工程を完璧に管理する必要があることの確認。

➁ その中で今回事故が発生した理由は、本来なら自社ですべてを完結させるのが理想ながら、米飯に関してイレギュラー(半年ぶり)に納入業者を利用した。そのような際には納入の条件温度が決まっており、それをチェックする必要があるが、今回はそれを確認することをせずに受け入れてしまい、実際に盛り付けする段階になってはじめて温度が高いことに気づき、冷却作業を行ったうえで盛り付けすることになっという事実の確認。

→(納入温度が高いのはそもそも納入業者のミスではあるが)①にあるように、製造販売業者はすべての管理責任を負うため、(一切納入業者を責めることなく)自社の認識の甘さこそが原因であると断言。

③  被害者に対する心からの謝罪。

④ 自社製品を流通してくれているスーパーなどの流通業者に対する心からの謝罪。

⑤ 同業他社(全国のお弁当屋さん)の営業に対して(風評被害を含む)悪影響を及ぼしてしまったことに対する心からの謝罪。

⑥ 八戸という地域に対する悪影響を及ぼしてしまったことに対する心からの謝罪。

⑦ 保健所と連携し、二度とこのようなことを起こさないシステムの構築のためにできるすべてのことを実行することを宣言。

次に、概要説明後の記者との質疑応答の中で私が最も印象に残ったものを二つ引用します。

一つ目は、記者の「事故発生から1か月たってようやく会見を開いたわけですが、なぜこんなに時間がたってからとなったのですか?」との質問に対して、次のように回答されています。

「自社においても全容把握ができていない中で会見をすれば、それはかえって無責任な情報発信となってしまうため、保健所との連携によってできる限り早く詳細状況の把握をする努力をした結果、ようやく今このタイミングで責任のある情報発信ができると判断したためです。」

二つ目は、記者の「なぜ本来自社でやるべき米飯の製造を外部委託してしまったのかですか?」との質問に対して、

「昨今の労働環境改善の動きに合わせ、残業縮小のための時間短縮を図る必要があったからです。そうはいっても、その場合の正規の手順である受け入れ時のチェックを怠っていなければ、この事故は防げていたかもしれないことを考えれば、自社ですべてをコントロールできる体制づくりを徹底することは絶対に必要なものだったと考えます。」

確かに、米飯の納入時に温度のチェックを怠ったことは大きなミスです。しかし、そのチェックを行っていたとして、温度が高いことを把握したとき、どれだけの会社が、その納入を拒むことができたでしょうか。

お弁当の予約は受けてしまっている中で、それらを作らずに穴をあけるという判断をどれだけの会社ができたかは疑問です。

この会社はそのような状況の中ではおそらく最善の方法である「冷却作業を行ったうえで盛り付ける」という対応はとっています。

それでも事故は起きてしまいました。

ですから、吉田社長は、「自社ですべてをコントロールできる体制づくりを徹底することは絶対に必要なものだった」との心からの反省の弁を述べています。

少なくとも私には吉田社長の発言のどこをとっても「言い訳」に聞こえる部分は一切ありませんでした。

今までいくつもの企業の「謝罪会見」を見てきましたが、すべては「言い訳」が前面に出るものであり、自らの責めを少しでも軽くしようという意図がみられないものは皆無でした。

もちろん、吉田屋さんは、今回絶対に起こしてはいけない事故を起こしてしまいました。

しかし、この会見を経て、このようなトップがいる会社のお弁当は、今後はきっとどこよりも安心して食べられると少なくとも私は感じました。

経営をしていれば、どれだけ気を付けていてもこのような問題を引き起こしてしまうリスクはゼロではないはずです。

その意味でこの吉田社長の会見はすべての経営者が襟を正して拝聴すべきものであると感じました。

 

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