代表ブログ

永遠のジャック&ベティ

2021年7月23日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

日本の英語教育における問題の一つとして中学の教科書の「奇妙性」があげられることがあります。

「奇妙性」という表現はそれ自体が奇妙な言葉ですが、それはなんというか「必然性」に乏しいというか、「唐突」というか、あり得ないシチュエーションに言葉をのせていることからくる不自然さといったところを指しています。

もちろん、これはある程度仕方のないことです。

というのも、(今では小学校中学年から英語に触れるようになりましたが、)最近まで英語は、ある程度の思考力・常識力がついてきた段階だと言える中学生になってはじめて習うものでした。

そのため、中学生の思考力・常識力と全くゼロからスタートする英語の語彙・文法のレベルのミスマッチが生じてしまい、この「奇妙性」が発生が発することを避けられなかったからです。

昭和24年から33年に全国の8割以上の中学校で使われていたとされる「ジャック&ベティ」は英語教科書の代名詞のように言われます。

今回は、この教科書の「奇妙性」にスポットライトを当て、それがどのくらい「奇妙」なのかを浮き彫りにした「永遠のジャック&ベティ」というパロディ短編小説をご紹介したいと思います。

ここで少しだけ、その抱腹絶倒経験を共有します。(赤字で私の心の中のツッコミを追加しておきます。)

その女性の顔を見つめているうちに、ジャックの頭の中で時間の逆流が生じていった。この人は、あのなつかしい、、、と思ったとたん、彼の言語中枢は三十数年間分退化した。やあ、もしかして君は、ベティじゃないのかい?という普通の会話言葉が出てこなくなり、中学時代の奇妙な言葉遣いに戻ってしまったのだ。

「あなたはベティですか?」

そう問われたその女性の顔に驚きの色が広がった。そして、彼女もまた懐かしさのあまり言葉が変になってしまったようだった。

「はい、私はベティです。」「あなたはベティ・スミスですか」「はい。私はベティ・スミスです。」

間違いはなかった。その言葉使いには昔の面影が色濃く残っていた。

「あなたはジャック・ジョーンズですか」「はい、私はジャック・ジョーンズです。」

こうして、三十数年ぶりに再会した二人は路上で奇妙な会話を始めた。

「オー、なんというなつかしい出会いでしょう」「私はいくらかの昔の思い出を思い出します。」(いくらかって、someの訳か?)「あなたは一人ですか?」「はい、私は一人です。」(一人かどうかなんて見ればわかるだろ!)

「これはテーブルですか」(それ聞かなければ分からないのか?)「はい。これはテーブルです。」(真面目に答えるんかい?!)

「あなたは何をしていますか。」「私は弁護士です。」「それはよい仕事です。」

とまあ、こんな感じで中学生の思考力・常識力と全くゼロからスタートする英語の語彙・文法のレベルのミスマッチが生じまくっているのですが、でもそれはそのミスマッチだけが原因ではないかもしれません。

会話は続きます。

「しかし、私は二か月前に職を失いました。」「オー、それは悲しいことです。」(内容の重さを考えるとそんなリアクションありえないでしょ!)「私は自動車会社の弁護士をしていました。その会社が、日本の自動車の輸入が増えたがゆえに潰れたのです。」(日米貿易摩擦の真っただ中の時期だったんですね。)「よくあることです。」(マジですか?)

会話が途切れる。

「あなたはアメリカの中で最も美しい女性の一人です。」「それは私が聞いた中で最も見え透いたお世辞の一つです。」(ああ、one of the most,,,の練習ね。)「あなたが今住むところの家はどこにありますか」(ところのって、関係代名詞のワンパターン訳ね。でも最近そうは言わなくなってきてるかも)「この通りを東へ行き、三番目の四つつじを左へ曲がりなさい。そうするとあなたはそれを見るでしょう。」(突然、命令口調ですか、しかも「見る」って、せめて「見える」でしょう。)「多分私はそれを見るでしょう。」(やはり私も「見る」んだ。笑)

 

そうなんです。この「奇妙さ」は学習者の思考力・常識力と英語の語彙・文法のレベルのギャップが小さくなってきても、一向になくならないのです。

では何が「奇妙さ」の本当の原因なのでしょう?

おそらく、英語と日本語の言語的距離の問題も大きく関係している可能性は高いのですが、それだけでもなさそうです。

そのため、私は自らが主宰する「全項目を網羅した英文法講座」では、まさにこの部分の解明に多くの労力を注ぐようにしています。

と、このように英語教育論に結びつけてみました。

とは言え、活字を読むだけでここまでおなかを抱えて笑うという経験をしたのはこれが初めてというくらい圧倒的に面白い内容になっていますので是非、単純な読み物としてもご一読をおススメします。

 

◆この記事をチェックした方はこれらの記事もチェックしています◆