代表ブログ

「求められる博士」3倍化計画

2024年4月1日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

以前にこのブログで「低学歴ニッポン」と「高学歴難民」という二冊の書籍をご紹介して、日本社会がマスター(修士)やドクター(博士)を評価しない低学歴社会であることが、従来の工業社会ではプラスに働いていた一方で、富の源泉がモノから情報や先端技術に移った現代の情報化社会においてはイノベーションの創出に貢献できる人材の不足という決定的なマイナス要因となること、そしてそのせいで苦悩する博士号取得者たちの実態を目の当たりにしました。

その記事の中で私は次のような感想を書きました。

「日本の国際競争力が急激に下がっているのを食い止めるためにはまず、日本人のメンタリティーを工業社会のそれから情報化社会のそれに変え、すぐにでもマスター(修士)やドクター(博士)を高く評価し、それを実際の競争力向上に結び付ける政策を断行することしかないと考えます。」

先日(2024年3月26日)の日経新聞の記事にその政策への第一歩になる可能性を感じさせられるニュースがありましたので以下要約します。

「文部科学省は26日、『博士人材活躍プラン』で、40年に人口100万人あたりの博士号取得者数を20年度比で約3倍の300人超にし、世界トップ級に引き上げる目標を掲げた。学士号取得者に対する博士号取得者の割合は8%と同3倍にするほか、博士課程学生の就職率は80%と23年比で10ポイント高めるとした。大学には教育の質の保証や国際化を求めた。経団連が2月に発表した調査によると、企業が大学院に求める改革として産学連携や課題解決型教育が6割に上り、カリキュラムと産業界の期待のズレが鮮明になっている。文科省はこうしたズレを解消するため、世界トップ水準の教育を行う拠点形成や海外大との共同研究拡大を大学に促す。社会人教育などで企業との連携拡大も求めた。同時に企業にも博士人材の能力や強みに目を向けるよう要請した。文科省は博士のキャリアパスを多様化するため、企業と大学が取り組むべき内容をまとめた手引を作成する。実践的なインターンシップの拡充にも取り組む。」

なんと、上記の私の感想に対して、ほぼ満額回答のような計画の発表でした。

ただ、記事の最後には次のような冷静な評価も紹介されていました。

「政策研究大学院大の隅蔵康一教授(科学技術政策)は『博士人材の3倍増は簡単に達成できる目標ではない。学生を研究室に囲い込まずに長期的な視野で活躍してもらうには大学教員の意識改革、学生への経済支援拡充に向けた財源確保などを進め、なり手が自然に増える循環をつくっていく必要がある』と話した。」

つまり、この計画を成功裏に実現(ただ3倍にするだけではなく日本におけるイノベーション創出につなげる)ためにはそれこそ「産官学」の本気度が試されているものと思います。

 

◆この記事をチェックした方はこれらの記事もチェックしています◆