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「豚の福祉」について

2024年3月24日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

先日(2024年3月23日)、タイトルからして斬新なニュース記事を見つけましたので以下に引用します。

「ストレスの少ない環境で家畜を育てる『アニマルウェルフェア(動物福祉)』を巡り、米西部カリフォルニア州の法規制が畜産業界に波紋を広げている。飼育方法の基準を満たさない豚肉製品の販売を州内で禁じることが柱で、対応には畜舎の改造費などがかさむため、生産者は悲鳴を上げている。同州が提案した規制法は、2018年の住民投票で承認された。反発した生産者団体が訴訟を起こしたが、連邦最高裁が23年に規制法を支持する判断を下したことを受け、今年1月に完全施行された。規制では生産者に対し、妊娠中の母豚が自由に動き回れるよう1頭当たり少なくとも2.2平方メートルの面積確保を義務付けた。カリフォルニア州内での豚肉やベーコンの販売には、第三者機関から認証を得て基準を順守している証明が必要となる。全米で人口が最も多い同州は消費する豚肉の9割を州外に依存しているため、サプライチェーン全体に大きな影響が及ぶ。全米豚肉生産者協議会の推計によると、基準を順守した場合、1頭当たりの投資コストは2割増の最大4000ドル(約60万円)となる。同協議会は『小規模生産者は廃業に追い込まれる』と非難。豚肉製品によっては価格が4割上昇するとの当局試算もある。」

この問題何か「既視感」があるなと思ったら、徳川幕府5代将軍綱吉の「生類憐みの令」そのものだと面白半分に指摘してしまいそうですが(笑)、そうではなく今年の年始に書いた「日本の物流の行方」の物流業界の「2024年問題」に構造が似ているのです。

「豚」と「トラック」では何も似ていないではないかということではなく、やろうとしていること自体、誰も反対するようなことではなく社会全体のためには絶対的な「善」なのですが、「当事者の納得」を得るという社会的コストを負担しないで前に進んでしまっているという点、つまり「順序」に問題がありそうだというところが似ているのです。

この法整備は、豚さん自体(というよりは動物愛護意識の高い人々)にとってもよいことに決まっていますし、それを食す消費者の安全にとってもよいことに決まっています。

ただし、それを実現するためには「コスト」がかかるわけですが、そのコストを食肉業界が負担していくために価格転嫁を可能にすることを事前に社会が業界と合意していない状態のまま法整備が先行したからこそ、「小規模生産者は廃業に追い込まれる」という拒否反応を業界が示しているわけです。

繰り返しますが、日本における「物流の2024年問題」にしても、アメリカの「豚の福祉」にしても、この問題意識自体は絶対的に必要であり、善なるもののはずです。

でも、その「善」のために、当事者の一方だけが犠牲になっているのを放置したまま制度化するから問題なのです。

また、冒頭で冗談半分で取り上げた悪名高い「生類憐みの令」に関しても、最近の歴史研究では、実施にあたって混乱があったことは事実だが、この政策によって、それまでは戦国時代の名残が色濃く、動物だけではなく人間の命もないがしろにする風潮だったのを、「病気の家畜を外に捨ててはならない」「旅の途中で病気になった宿泊客を外に捨ててはならない」「捨て子をしてはならない」など命の大切さを前提とした法整備がなされるようになったという事実から社会変革を意図した法であったという解釈がなされ、綱吉は実は暗君ではなく名君であった可能性があると再評価されているようです。

だからこそ、このような善なる改革が混乱なく制度化されるよう、「法整備の前にその合意」という順序の重視を徹底することを強く望みます。

 

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