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ゼロコロナという病

2021年8月18日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

この記事を書いている今まさにコロナ第五波の真っただ中なのですが、第一波からこの第五波までの一年半以上の時間の中で私たちは何かを学びとってきたのかと疑問に思わない日はありません。

毎日毎日、感染者数が「ニュース」として発表され、それが絶対値として多くなれば、「緊急事態宣言」、それよりも緩やかなら「まん防措置」、それらによって多くの飲食店が先の見えないトンネルの中を歩まねばならない状況を「仕方のない」こととして社会が強要してきた、そういった一年半だったように感じています。

少し前に、こんな理不尽な状況をどう捉えたらいいのかについて「コロナ自粛の大罪」という本をご紹介して問題提起しましたが、今回は同じような問題意識を持った二人の専門家が対談という形で前著同様全く忖度なしに「直言」している「ゼロコロナという病」という本をご紹介します。

まずは、本書からこのコロナ禍の総括について書かれた部分を引用します。

「2020年の流行当初はもちろん、様々なことが分かってきた2021年春の時点であってもこの新型コロナウィルス感染症が新しいタイプの風邪であることは間違いありません。そしてはっきり分かったことは、この『新型コロナ』は多くの日本人にとっては軽症であったり、無症状であったりしますが、ごく一部、高齢者や既往症がある方に重症者が出るということです。また、このウィルスは40%以上が発症前に他人に伝染すことが報告されており、インフルエンザなど他の呼吸器感染症より発症前の感染確率が高い特徴があります。新しいウィルスであるがゆえに流行当初は誰も免疫を持っていないため、感染が広がりやすく、重症化する人も一定数出てきてしまう。しかし、感染力や致死率でみた場合、SARSやMERSなどの強力な感染症とは明らかに違うことが分かっています。そうである以上、コロナ対策は『重症化しやすい高齢者や既往症患者』を保護することをメインにすべきなのです。それ以外の人たちは基本的には交通事故以下の死亡率ですから、気を付けつつ免疫をつけるか、ワクチンを接種しながら収束を待つ形で大丈夫ですし、それ以外の方法はありません。10年たてばただの風邪の一種になります。今は過渡期と言えます。」

つまり、著者の二人はコロナが風邪の一種である以上、これを完全に消滅させることすなわち「ゼロコロナ」を目指すことは不可能、いや政策的に絶対に目指してはいけないという大前提に立ったうえで、少なくとも現在の日本でとられている「コロナ対策」の本質はまさに「バランスの悪さ」であると断言しているのです。

このことは本書の以下の言及から理解することができ、私もその主張に納得感を持つに至りました。

「コロナ対応の問題は経済か感染防止かの二択ではない。経済は公衆衛生に含まれるんだという話です。経済苦で命を落とす人、長引く自粛で精神疾患に至ってしまう人、全てのリスクと感染リスクを見渡しながら対策を決めていくのが本来の『公衆衛生』なわけです。特定のリスクだけを考えるのは公衆衛生の観点を欠いた、単なる『感染症対策』に過ぎないと。しかし、分科会の尾身会長は『経済は私たち、分かりません』と言っている。つまり、感染症専門家はウィルスをたたくことしか考えていないのです。この態度は、例えば内科医ががんの放射線治療で『これをやれば癌に効果があるかもしれません。しかしそれ以外にどういう悪影響ができるか私は知りません。私の仕事は癌を直すことであって、その結果、あなたの体がどうなるかは私の知ったことではない。』と言っているのに等しい。」

この指摘は、一年半以上の時間の中で起こったことを非常に分かりやすくまとめていると思います。

つまり、日本政府は、自らが「公衆衛生」の観点から「感染症対策」と「経済運営」のバランスをとるべき自らの立場を早々に放棄して、声の大きい「感染症対策」の観点のみの意見を聞かざるを得なくなってしまったということです。

その結果、感染者数のみを指標としながら人流を抑制することを唯一の問題解決方法だとして「緊急事態宣言」や「まん防措置」を発出し、飲食店や観光産業などの特定の産業に対して「仕方のない」こととして強要し続けることになってしまいました。

しかも、尾身会長をはじめとする「感染症専門家」は自分たちが「公衆衛生」の概念のうちの半分をしめる「感染症対策」の専門家にすぎず、もう半分の「経済運営」については門外漢であるという「留保」をつけることをしませんでした。

それよりなにより、政府は「公衆衛生」の観点から「感染症対策」と「経済運営」の両方の意見を取り入れ、腹をくくって(責任をもって)政策決定をするという姿勢を全くとりませんでした。

「感染症対策」の専門家の声が大きすぎたことも問題ですが、本来の職務である「バランスをとる」責任を放棄した政府の姿勢が最大の問題であることがよく分かります。

ここまで大きな犠牲を払った一年半を経験したのにも関わらず、世の中の動きがコロナ誕生の頃と変わらず、全く同じことの繰り返しをしていることに対してもはややるせなさしか感じることができません。

 

 

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