日本人と英語

オーバーシュートって何?

2021年2月3日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「迷える英語好きたちへ」からテーマをいただいて書いますが、第三回目の今回が最終回です。

最終回のテーマは「なぜカタカナ語が氾濫するのか」についてです。

日本では「カタカナ語」が蔓延してしていることをこのブログでも取り上げてきましたが、このコロナ禍においては「カタカナ語」の製造ペースが一気に加速したことを皆さんも感じていると思います。

「クラスター」「パンデミック」「ソーシャルディスタンス」「オーバーシュート」「アラート」などなど。

これらの実例を挙げつつ、本書の共著者のお二人もこの件について非常に強い批判的な指摘をされています。

私は、以前の記事において日本語の中にカタカナ語が多く存在する理由の一つとして、「カタカナという漢字とは別個の音だけを表す文字の存在を活用することによって、『効率性』を実現した結果」を挙げています。

そもそも「カタカナ語」は、今まで日本語の中に外国語のそれにあたる単語が存在しないから新しい単語を新たに製造しなければならない場合に、「効率性」を重視して、その外国語の音をそのままカタカナで表記して日本語に組み込んでしまうというものだったはずです。

ですが、今回製造された多くの「カタカナ語」を見ると「カタカナ語」の何が一番の問題なのか、その問題の核心が見えてきます。

それは、カタカナ語の多くに日本語に組み入れるときに、本来の意味とは少しズレて組み入れてしまっている可能性が結構あるということです。

例えば今回作れらた「オーバーシュート」。これは「爆発的感染拡大」という意味で英語から導入されていますが、この二つには明らかにずれがあるようです。

以下にこの点に関する本書の指摘を引用します。

「overshootという英単語(動詞と名詞)は、『(想定より)行き過ぎる』『予想を超える』という意味です。飛行機が停止位置より行き過ぎることや、予算の限度を超えることなどに使います。ところがコロナ関連の報道では『爆発的感染拡大』という意味で使われていました。そこで海外の英語話者に問い合わせたところ、overshootをコロナ感染症報道で目にしたり、専門家が使っているのを聞いたことはない、という返信ばかりでした。『完全な間違い。overgrowthと混同したんじゃない?』という人もいました。それでは日本で使われる『オーバーシュート』が英語報道ではどのように表現されているかと言えば『explosive surge』です。専門家会議では、その言葉に関する問い合わせが多かったからか、後に『オーバーシュートとは、2~3日で累積患者数が倍増しそのスピードが継続する状態』という定義を発表しました。」

すごい、最後は新しい「オーバーシュート」という言葉をオフィシャル化するという力技です。

もしかしたら、「(車の)ハンドル(=実際はsteering wheel)」なんかも、かつてこのような力技がものをいった結果なのかもしれません。

とはいえ、日本人が日本語の中で全く新しい言葉を公式に作るということのどこが悪いのかと言われるかもしれません。

しかし、私は、この「カタカナ語」の一番の問題はその存在にあるのではないと思っています。

それよりも、日本語としてそれを覚えた日本人が、あくまでもそれを「外国語(英語)」であるという意識を持っているため、「外国語(英語)」を使用した時にそれを当てはめてしまうことの方が大きな問題だと思っています。

つまり、せっかく覚えた「カタカナ語」の中から、そのまま使えるものと使えないものを区別し、尚且つ使えないものをアンインストール(これはセーフなやつ)しなければならないのです。

アメリカ留学時代に、この非生産的な作業に何度も悩まされた私としては、ならば始めから、「感染集団」「大流行」「社会的距離」「爆発的感染拡大」「警告」と言ってくれればいいではないかと思うわけです。

であれば、インストールもアンインストールも必要ないですから。(笑)

 

◆この記事をチェックした方はこれらの記事もチェックしています◆