日本人と英語

母音の連続と二重母音の違い

2024年2月3日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英語の発音と綴り #309」からテーマをいただいて書いていますが、第二回目のテーマは「なぜ母音の前ではaがanにtheの発音がジになるのか」です。

本書においてはその理由を実にシンプルに「英語は母音が連続するのを嫌うから」としています。

私たち日本人は、母音が連続することに対してそれ程違和感を感じませんが、実は世界の言語の中には母音の連続が避けられるものが少なくなく、英語もその一つだと言います。

以下、本書の該当部分を引用します。

「母音は妨げなく発せられる音であるため、妨げのある子音という仕切りが母音間にないと境界が不明瞭になり1つに融合することもあります。例えば、英語のpower【páuər】が【par】(a一つに融合)となってしまうこともあります。滑らかにつなげつつ、独立した音節としようとすると、明確な子音にならない程度の仕切り(半母音)が生じたりして、【páuwər】のように半母音を挟んで発音されることもよくあります。(中略)また、定冠詞the【ðə】 +名詞end【end】はthe【ði】 +名詞end【end】になります。母音の連続【əe】が融合しないように、【i】という鋭い母音が使われます。不定冠詞a【ə】も母音の前では【ən】と発音され、母音の連続(による融合)が避けられています。」

確かに、不定冠詞a【ə】とan【ən】についての説明は非常によくわかります。

しかし、定冠詞the【ðə】 についてはちょっと分かりにくいのが正直なところではないでしょうか。

これは、母音の中にも融合しやすいものとしにくいものがあって、【ə】と【e】は非常に融合しやすいけど、音的に鋭い【i】と【e】はそれほどでもないから、母音が連続しても問題ないという理解なのだと私は解釈しました。

ただ、そうなるともう一つ大きな疑問が湧いてきます。

それは、英語にはout【aUt】やgo【goU】などが存在しているわけですが、これらには上記のようなケアが行われているようには見えませんが、これらに見られる母音の連続は融合しないのかという疑問です。

こちらについては、「二重母音」というまた別個の概念で次のように説明されています。

「英語のI【aI】say【seI】boy【bɔI】now【naU】low【loU】などに見られる母音も一見、母音の連続のように見えます。しかし、これらは母音の連続ではなく、1つの母音です。日本語の『あい』は『あ』と『い』の連続で、2音節ですが、英語のI【aI】は2音節ではなく1音節です。日本語の『あい』も早い発音では1音節となることもありますが、ゆっくりした発音では2音節になり、1音節のまま長く発音されはしません。しかし、英語の場合、I【aI】はゆっくり伸ばして発音しても【a:I:】ではなく切れ目なく【aI】全体が長くなります。【aI】は【a】から【i】の方向に向かう音で『二重母音』と呼ばれます。必ずしも【I】に到達するわけではなく、【e】あたりまでしか至らないこともあります。」

ちょっとこれだけだと体感的に理解しがたいと思いますので、音声を含めて説明してくれている動画(3:55~)と(15:15~)を見つけましたのでご参照ください。

発音に関してはおそらく世界で最も単純な体系を持っている日本語を母語とする私たちにとっては、たとえ頭では理解できたとしても、自在に聞き取り、自在に発するところまでの習得は絶望的に厳しいものがあるというのが正直な感想です。

 

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