日本人と英語

現在完了のhaveとは何なのか

2021年7月23日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英文法の『なぜ』2」からテーマをいただいて書いていますが、第八回目の今回のテーマは「現在完了のhave」についてです。

私は自らが主宰する「文法講座」の現在完了の授業の中で、現在完了をつくる「have+動詞の過去分詞」の「have」の正体について、世間一般でされがちな「助動詞である」という説明を避けています。

その理由は、それよりも前に説明している「助動詞」の定義を「動詞を助けるためのオタスケマンであり、その後には必ず動詞の原形が来るもの」としている関係上、この「have」を助動詞に分類してしまうとこの定義の後半の「その後には必ず動詞の原形が来るもの」という部分に抵触してしまうからです。

そのため仕方なく、現在完了をつくるためのhaveは「現在完了のhave」という独立した品詞を便宜上作る形で乗り切っています。

ただ、「現在完了のhave」という名の品詞は自分で言っていてもやはり違和感はぬぐえず、何とかこれをしっかり説明できないかと常にネタ探しをしていました。

そして遂に本書にて、その正体に関する説明を見つけましたので以下に該当部分を引用します。

「かつて私が中学一年(1961年頃)で教わった英語教科書ジャック&ベティでは動詞haveを使った疑問文は主語と動詞を入れ替える形でした。次の二年次では教科書は別のものに変わり、疑問文は助動詞doを使う言い方に変わり大いに戸惑いました。前項(前回の記事)で見たように、古英語では疑問文は主語と動詞を入れ替えるという形でした。その後、助動詞doを使う言い方が始まり、シェイクスピアの頃には一般動詞の疑問文はそちらが主流になりました。しかし、一般動詞の中でもhaveだけは主語と動詞を入れ替える形がしぶとく残りました。その後、haveに対しても疑問文に助動詞を使う方法が始まりましたが、少なくとも教科書に載っていたくらいですから1961年くらいまでは確実に両方あったわけです。」

なるほど、ついこの間までは「動詞haveを使った疑問文は主語と動詞を入れ替える形」が歴然と存在していたことが分かりましたが、しかし、今回のテーマは「一般動詞have」ではなく、「現在完了のhave」ですので、これだけでは「現在完了のhave」の正体について説明したことにはなりません。

しかし、私は以前の記事で「現在完了形」の成り立ちについて以下のように説明したことがあります。

「もともと I have some money saved. → savedされたmoneyをいくらか『持っている』という文章で、過去にsavedされた(完了)このお金を『現在持っている』(現在)という意味。したがって、この形ではhaveは普通の他動詞なので否定や疑問のときは助動詞doが使われていた。ちなみに、このhaveがあくまでも現在のことを表している(現在形)ため、当たり前のこととしてyesterdayやlast yearというような過去の一点を表すような副詞は利用できない。そして現代英語に至るまでの間に、以下のような形の変化が起こった。I have saved some money . 」

ここで、以前の記事と今回の内容を統合すると次のようになります。

「現在完了のhave」は、もともと「一般動詞のhave(~を持つ)」であった。ただし、最近までこの「一般動詞have」だけは他の一般動詞と異なり、疑問文や否定文を作るときのルールとして「主語と動詞を入れ替える」「動詞のあとにnotをを置く」という古い英語のルールを採用していたため、その動きがまるで「助動詞」のように見えていた。ただし、haveの後に残るのは、money saved(貯められたお金)の名詞と過去分詞の順序が入れ替わった結果、savedという過去分詞となり、動詞の原形ではないので「助動詞」とは言えない。

このように見てくると、やはり現在完了のhaveは私が授業の中で定義しているように「現在完了のhave」として独立した品詞とすることが最も合理的だという結論に到達せざるを得ないように思えます。

したがって、今後はより自信をもってこの「定義」を使っていこうと思います。

 

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