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人体600万年史(上・下)

2024年2月20日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

前回の「メンタル脳」において、現代人のメンタル不調の原因が「人間の脳が人類の歴史の99.9%の期間の環境に最適化され、『命にかかわるような大きなストレスを『時々』受けることに対応する』ように進化してきたので、たった0.1%未満の例外的でしかない現代の環境では『誤作動』ないしは『過剰反応』が引き起こされまくっている」ことにあるという言及に触れました。

そこで、今度は人体の進化の歴史そのものをもっと深く理解したいという欲求が高まった結果、「人体600万年史」という久しぶりに上下巻に分かれた重厚そうな本を読んでみました。(人類が類人猿と分岐してからを人類史として600万年ということですから、仮に近現代を200年としてもここは0.1%ではなく0.003%とするべきかもしれません。)

前回の「メンタル脳」において、人類の歴史の99.9%の期間の環境(すなわち狩猟採集の環境)に最適化された私たちの体は、現代の環境では「誤作動」ないしは「過剰反応」が引き起こされまくっているという例えで理解しました。

今回は、本書よりメンタル以外の身体に関しての「誤作動」ないしは「過剰反応」についての解説を二つ引用したいと思います。

まず一つ目として、「過剰」への反応について。

「私たちの身体は燃料バンクのような働きをしており、モノを食べた後はエネルギーを貯蓄し、使う必要が生じたときはためていたエネルギーを引き出す。この交換は、ホルモンの仲介により、炭水化物と脂肪が肝臓や脂肪細胞や筋肉やその他の器官への出入りを果てしなく繰り返すことによって行われる。したがってほかの動物でも同じだが、人間は余剰エネルギーを脂肪として蓄え、必要となったらそれをゆっきりと燃やすことでエネルギー収支がマイナスのまま長く続いている間も活動的でいられることに、驚くほど見事に適応している。人はすきっ腹でも狩猟や採集ができるのだ。最近までほとんどの人間はエネルギーの長期間のマイナス収支に定期的に耐えていた。すきっ腹が通常だったのだ。しかし、今は食べるものに全く困らないという進化史的に異例の状況にあり、自分が消費する以上のカロリーを長期的に摂取していると体に余分な脂肪がたまることになる。しかも、最近は食物が高度に加工されていて、糖と脂肪を大量に含む一方で食物繊維が取り除かれている。そうなると、肝臓と膵臓による処理が追い付かないほど急速にカロリーを吸収することになる。しかし、私たちの消化器系はそんなにたくさんの糖をすぐに燃やすようには進化していない。そうなると過剰な糖をひたすら内臓脂肪に送り込むのだ。内臓脂肪は少しの量なら問題ないが、残念ながら、あまりにも多くなりすぎると一連の症状(心臓血管疾患、2型糖尿病、生殖器がん、消化器組織がん、腎臓疾患、胆のう疾患、肝臓疾患など)を引き起こす。これがいわゆるメタボリックシンドロームだ。」

これは、人類の歴史の99%以上の時間をエネルギー不足への対策に費やすことで獲得した「貯蔵システム」が、現代の余剰の環境によってパンパンになるまでエネルギーをため込みすぎてしまい、自らの身体をむしばむ恐ろしい病気を誘発してしまうという皮肉な結果と言わざるを得ません。

「過ぎたるは猶及ばざるが如し」とは本当によく言ったものです。

二つ目は、「廃用(その器官を使わなくなったこと)」への反応について。

「自然選択のおかげで骨はちょうど鉄筋コンクリートのように堅固でありながらも柔軟な遺伝子と環境の両方の刺激に応じて柔軟に成長できる素材となった。骨の最初の形状は遺伝子によって決まるところが大きいが、大人になってからの骨が適切な形状を獲得するためには成長期に一定の力学的負荷も経験しないといけない。発達途上の骨にたくさん加重をかければ太く強くなる。逆に骨を十分に使わずに負荷を経験させないと骨は衰えていく。無重力の宇宙から戻った宇宙飛行士が誰かに帰還船から運び出してもらっているのはそのためだ。運動不足によって骨がスカスカになてしまう骨粗しょう症や柔らかいものばかり食べるようになってしまったことから顎のスペースがなくなることで生じる埋伏智歯(親知らず)に悩まされるようになったのだ。」

これも、人類の歴史の99%以上の時間をかけて進化させた「堅固でありながらも柔軟な遺伝子と環境の両方の刺激に応じて成長する」という非常に素晴らしい素材である骨や歯(顎)が現代の習慣(環境)とのミスマッチによって生じる皮肉な結果となっています。

私にとっては前回のメンタルよりも今回の身体(特にメタボリック)のほうがずっと身につまされる内容でした。

 

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