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「企業理念」の存在価値

2023年7月26日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

現在、社会を騒がせている「BIG MORTOR」の不正問題は、「企業理念」の重要性をこれでもかと思い起こさせられる10年に一度あるかないかくらいの非常に大きな経済事件だと思います。

従業員数6000人、売上高7000億円、全国300店舗以上、買取台数6年連続日本一という押しも押されぬ業界最大手の企業が、あまりに大規模に冗談にしか見えないような幼稚な手法で「不正」を働いていたことが明らかになりました。

他社にはない非常に卓越した営業手法と優秀な人員をそろえることがかなわなければこれだけの実績を積み上げることは不可能だったはずですが、そのような企業においてもこのような信じられないことが起きたことは事実で、そうなるべき「欠陥」がこの企業のどこに存在していたのかを考えてみました。

私はかなり前にこのブログで「企業の経営理念はなぜキレイごとに聞こえるのか」という以下のような記事を書きました。

「そもそも何のために『企業の存在意義(企業理念)』を明示する必要があるのかといえば、企業としては『会社の存在意義に共感してくれる人を集める』という目的、働く人としては『お金のためだけに働くわけではなく、自らのやりたいこととできるだけ近い目的を掲げた企業で働きたい』という欲求、そして、お客様や将来のお客様の『できるだけ自分と考えが近い、すなわち共感できる企業から購入したい』という希望、この三つを結ぶために必要不可欠だからでしょう。ですから『胡散臭さ』とはそもそも無縁なはずです。しかし、実際には多かれ少なかれ『胡散臭さ』を感じてしまう。その原因は、多くの『企業の存在意義』が『人間の本性』を無視していることではないかという考えに思い至りました。つまり、『人間は自分と自分に深く関係した人間の幸せを圧倒的に大事に思う』という本性です。普段どんなに立派なことを言っても、自分の家族の一人の命のほうが、地球の裏側の100万人の命よりずっと大切だと思うのが人間です。これは、マズローの欲望5段階説にも通ずるものがあると思います。人間は自分のお腹が満たされていない段階では、それ以上の欲求に思いが至らないという説です。誰もが明日のお金に心配な時に、世界の平和について心配できるわけがないのです。企業も株主という所有者(=人間)のあつまりである以上、企業の存続が脅かされたり、不安定になった場合には、普段言っている立派なこと(=「企業の存在意義」)をかなぐり捨て、自らの存続を第一に考えることになるのは当然と考える前提が必要だと思います。ですから、多くの企業が掲げる『企業の存在意義』は、『企業の存在が脅かされるような状況を除く』という条件付きだと解釈すると、この『胡散臭さ』は一挙に解消されることに気が付きました。」

この記事の中で「胡散臭さ」という表現を使っていますが、今回の事件を起こした「BIG MORTOR」にも次のような「企業理念」が掲げられていました。

ちなみに、有名企業の「企業理念」など企業ポリシーを検索できるサイトを見つけましたのでこちらでご参照ください。

「1.常にお客様のニーズにあったクオリティの高い商品、サービス、情報を提供する」「2.目標利益を確保して会社を存続発展させる」 「3.社員の生活安定向上を図る」

今回発表された「不正」の内容を考えると、「1.常にお客様のニーズにあったクオリティの高い商品、サービス、情報を提供する」についてはブラックジョークにしか思えませんが、私が本当の「欠陥」として取り上げたいのは、「2.目標利益を確保して会社を存続発展させる」が「企業理念」に掲げられていたことです。

それは、記事の最後に書いた以下の内容によって説明したいと思います。

利益と理念どっちが大切?』で書いたビジョナリーカンパニー』の中にあった言葉をもう一度ここでご紹介させてください。

『企業にとっての利益は人間にとっての栄養や血液、水分のようなものである。したがって、それ自体が目的では決してない。しかし、それがあって初めて人間は活動することができ、特定の目的を達成することができる。つまり、利益OR理念の議論は的を外しており、あくまで利益AND理念の議論のみが存在するのである。』」

ここで重要なのは、「利益AND理念」というようにこの二つは並立しているけれども、決してこれらは同レベルではないということです。

目的である「理念」は血液である「利益」が前提になければ存在しえない、つまり利益が理念の先にあるが、「利益」が出ている限りにおいては目的である「理念」を達成することが最優先という関係にあるということです。(もちろんその議論以前に法律の順守というものが大前提なので、利益を出すために不正を行うということなどあり得ませんが)

ですから、「企業理念」の中にその前提である「目標利益の確保」を書いている時点で、目的と前提がイコールとなってしまうため私は問題だと思うのです。(つまり、前提である利益については企業理念に載せるべきではない)

まずこの会社は何を目的としているのか、それが「1.常にお客様のニーズにあったクオリティの高い商品、サービス、情報を提供する」であり、この理念を実現し続けるために「必要な利益」を出すことがこの会社の存在意義であるということを経営者が従業員に伝えることができていたのであれば、このような経済事件は起きなかったはずです。

その意味で、今回は改めて「企業理念」の重要性について考えさせられました。

 

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