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セルフィッシュ~selfish~

2020年12月18日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

意表を突くタイトルの本は少なくないですが、本書「セルフィッシュ」はまさにその代表例だと思います。

しかも、そのマイナスイメージのある概念の「ススメ」的な内容であることからその違和感は読み始める前に最大化されます。

とは言え、本書の内容は「自己チュ―」をお勧めする有害なものではなく、冒頭から「セルフィッシュ」という言葉の概念をポジティブな意味に捉えなおす試みから始まります。

本書での著者の意図は、「セルフィッシュ」という言葉が一般的に持つ概念から「自己中」と「無神経」の二つのイメージを排除して、完全に私たち人間が幸せになるために持つべき姿勢を表すものであることを理解させることにあります。

その概念を理解させた後、具体的に私たちが幸せになるためにこの概念をどう具体的に活用していくべきかを28項目にわたって解説していくというものです。

「自己中」と「無神経」の二つのイメージが排除された後の「セルフィッシュ」という言葉の概念とは一体どんなものなのか。

そのイメージを具体的につかむのに有効だと思われる著者の記述部分を以下に引用します。

「おそらく人間の歴史のほぼ90%は食べ物を集め、敵と戦うことを群れの単位で共同で行ってきた。その中では、仲間との助け合いは必須であるため、群れからつまはじき似合うのは何としても避けたい事態であった。農耕が始まると少し様相は変わり、やがて町ができるとさらにその変化が進んだ。文明が高度化すると専門家になるものが現れる。専門家が皆の役に立とうと思うと、必然的に狩りや農作業から解放される必要があった。こうして専門家たちは自分のやりたいことを追求することができたのだ。こう考えると、現代はセルフィッシュになることが許されている時代である。というより、むしろ個人の進歩はもちろん、そんな個人を集めて人類全体としても高いレベルへと進化しようと思うと、セルフィッシュになることがむしろ必要になってくる。」

つまり、「セルフィッシュ」になるとは、人類全体の価値を高めることを目的に、自分自身が他人よりもより効率的に結果を出すことができる分野を見つけ出し、その分野を極め、他者とは異なる行動を継続してとることができるために以下のような行動をとることができるようになることだと捉えられます。

「自分がどんな人間で何を求めているのかを明確に他人に伝えた上で、他者とは異なる行動をとることを優先すること」

そうなると、場合によっては相手に対して「ノー」と言わなければならないことになります。

このことは特に私たち日本人にとってはかなりハードルの高いことですが、上記の目的を達成するためには、それは必要なことですし、その目的が明確に相手に伝えられているのであれば、相手にはむしろ安心感さえ与えることにつながります。

どうでしょうか。

ここまで説明されると、「自己中」と「無神経」の二つのイメージが排除された「セルフィッシュ」の概念が浮き上がってきませんか?

そして、この概念を理解し、「セルフィッシュ」になればなるほど、自分の心をまず先に満たし、余裕が生まれることでより他人に対して寛大になれる好循環が生まれます。

本書の著者トマス・レナード氏(2003年に心臓病で急逝)はアメリカ人ですが、「ノー」ということが極端に下手な日本人にこそ読まれるべき本だと思います。