日本人と英語

なぜ must=have to なのか

2022年8月26日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英文法を哲学する 」からテーマをいただいて書いていますが、第五回目のテーマは「mustとhave to」についてです。

この二つの表現については、ほぼ「must=have to」の関係にある一方で、「mustには過去形がない」ことから過去形で表現したいときには「have to」を使うという使い分けをしている人も多いと思います。

今回は、なぜ「have to」が「must」と同じような意味になるのか、その理由について本書の指摘を引用したいと思います。

まずその前にそもそもその理解の前提となる「to 不定詞の名詞的用法」の知識を確認してください。

「ここでto不定詞を使った代表的なフレーズである『have to』について考えてみましょう。have に完了のアスペクトが付いたdoneを続けると動詞の現在完了形ができるのでした。では、have toを付けると、どうなるか。私たちはhave toをひと固まりにして、mustと同義の助動詞のように扱いますが、元をたどればこの表現は、

have + to 不定詞=これからすべきことが自分にある。(未然の『~する』がある。)

ということ。『これから』の感覚が『to→動詞原形』という不定詞の形に内在していると見ることには異論もあるでしょう。しかし、You have to do this. という表現の意味が『未然のto do this が君のもとにある』であることに疑いはありません。」

このように理解することで、肯定文ではタイトルのように「 must=have to 」の公式が当てはまるのに、以下のように二つの表現に否定をつけた時には正反対の意味になる理由がよく分かるようになります。

◆You must not do it.(あなたはそれをしてはならない。)は、「not do it(しないこと)」がmustだから禁止。

◆You do not have to do it.(あなたはそれをする必要はない。)は「to do it」をdo not have(持っていない。)から不要。

そして、著者はもう少し突っ込んだ仮説を提示しています。

それは、「現在分詞:継続(進行)」と「過去分詞:完了」という二つしかなかった「時相(アスペクト)」に「to 不定詞:未然」というもう一つの相を付け加えたらどうかというものです。

そうすれば、

I am doing it.(進行)

I have done it.(完了)

I have to do it.(未然) *I am to do it.も可能。

の三つがきれいに整理された状態で理解ができるようになるからです。

このように文法をどう見るか、その「哲学」によってより良い整理が行える余地はまだまだあるように思います。

 

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