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「大脱走」という理想的チーム

2022年6月26日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

前回、一橋大学の楠木教授の「絶対悲観主義」という著書をご紹介して、著者が理想とする「自分の思い通りにうまくいくことなんて、この世の中には一つもないという前提で仕事をする。」という生き方について見ました。

著者はそのような他者と極力関わらないで済む生き方を志向する方でありますので、経営学者でありながら、「チームワーク」という概念そのものからも距離を置くことを心掛けてらっしゃいます。(笑)

ですが、これまた非常に逆説的ですが、「良いチーム」とは何かを考えた時に、そんな著者でも好意的になれるチームがあるとすればそれはまず間違いなく「良いチーム」であろうと言います。

本書で著者はその具体例として1963年公開の不朽の名作「大脱走 The Great Escape」における脱走チームをあげています。

「舞台は第二次世界大戦下の捕虜収容所。連合国の兵隊がドイツ軍の捕虜収容所からの脱走計画を作って逃げ出すという脱走チームです。このチームが最高のチームである理由の第一は、目的が明確に共有されていること、脱走というメンバーにとって等しく重要なものです。第二に、強力なリーダーの存在。『ビッグX』という筋金入りの強烈なリーダーシップの持ち主が集団脱走の計画立案を担います。第三に、自然発生的な分業。リーダーの立てた戦略を実行する段になると、必要な資材をちょろまかす『調達屋』、装置を作る『製造屋』、身分証の偽物を作る『偽装屋』など多種多様なメンバーが活躍します。第四に、多様性。連合運なので国籍もばらばらでそれぞれが持っている能力や性格も多様です。もちろん、多様性のあるチームはそう簡単にはまとまりません。大脱走のチームも、最初から調和に満ちた仲良しクラブではありえません。最初はぶつかり合いながらもそれぞれが自分の個を立て、一つの目的に向かって奮闘することで、その仕事のプロセスでお互いに対する信頼と尊敬が生まれ、結果的に一体になっていく。大脱走のチームには優れたチームの条件が全て入っています。」

このように見てみますと、チームというのはプロジェクトごとに設定され、その目的の達成のためにそれぞれの構成員が最高のパフォーマンスを発揮するよう機能し、そのプロジェクトの終了とともにそれ自体解散するという非常に「後腐れない」「すがすがしい」集団だと言えます。

一見、「絶対悲観主義」という著者の生き方の哲学との親和性が低そうに見えて、そもそも関係を長続きさせることを前提としていないところなど、実は深いところで密接につながっていたりします。

その意味で言えば、大前研一氏の記事を取り上げた「リモートワークとアウトソーシング」で明らかにした「サラリーマン(労働者)のいないビジネス社会」に不可欠な存在であると思われます。

このようにこれからのビジネス社会に不可欠な存在でありながら、「終身雇用」と「年功序列」という長続きが前提の考え方が染みついた日本のビジネスマンにとっては現時点では採用することが最も困難な集団形態でしょう。

それでもどうしても採用しなければということなら、「明治維新」に匹敵するような極端なパラダイムシフトが要求されると思います。

 

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