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森林列島再生論

2022年10月5日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

ランゲッジ・ヴィレッジを運営する大芳産業は別事業として不動産賃貸業も行っています。

その目的は、主に役目を終えた建物を取得し、リノベ―ションを施した上で必要な方に提供することで再び世の中に求められる存在として復活させることであり、まさにSDGsの精神に完全にマッチする事業であると自負しています。

ただその事業を進める中で最近とても気になっていることがあります。

皆さんも「ウッドショック」という言葉を聞かれたことがあるかもしれませんが、2021年くらいからじわりじわりと木材の値段が高騰し始め、ロシアのウクライナ侵攻が始まった今年2月以降、急激に木材の価格が爆上がりしているのです。(それ以外の建築資材も値上がりしていますが、2月以降では木材の値段は体感的にはかつての倍に近い値上がりです。)

弊社の協力業者である大工さん曰く今まで40年のキャリアの中で初めての経験だそうです。

そんな中で「木材」に着目をしていたところ、本書が目に入り手に取ったというわけです。

このような現象は、コロナ禍そしてウクライナ戦争による海上コンテナ不足などからくる一時的なものと言われてきましたが、本書を読むことによって実はもっと根深く構造的な問題であることが分かりました。

それではまず、日本の現状を確認しておきましょう。

実は、日本は67%が森林であり、OECD加盟国ではフィンランド、スウェーデンに続いて第3位の森林率を誇り、人工林の面積も、米国、ロシア、中国などに続いて8位の「森林大国」です。

にもかかわらず、日本の木材の年間使用量8000万立米に対して、国産材が3,000万立米で自給率は40%程度しかありません。(とはいえ近年上昇してきており一時は18%まで低下しました。)

これは、世界的に見て低いとよく言われる日本の食料自給率(カロリーベース)の38%とほぼ同じです。

なぜこんなことになっているのかと言えば、木材は様々な産業の基盤となる材料であるため、世界的な低コスト圧力が強い素材であることから、大規模な生産に特化した北米、南米、ロシアなどの国々がかなり無理をしながらその供給を担ってきたため、いくら森林資源の豊富な日本であっても、自国の資源を利用しようとすると相対的なコスト負担が大きくなってしまい、自給を諦めざるを得なかったからです。

ですが、コロナ禍そしてウクライナ戦争によって、大規模に木材生産に特化した北米、南米、ロシア、アジアの国々のコスト削減努力が限界に達してしまい、ついに供給不全を引き起こしてしまった、というのが今回の世界的な「ウッドショック」の真相ということでした。

つまり、今まで世界の期待に応えて圧倒的に安く大量の木材を提供してきた国々がその期待に応えることに疲れ切ってしまったということのようです。

このことを前提にしてこの問題を捉えるならば、私たち日本は自らがすでに有している資源に着目し、適正なコストを負担することで持続可能な供給体制を構築することが重要であり、今回の「ウッドショック」はそのことに気づかせてくれたということなのです。

本書は、その持続可能な供給体制の構築するために日本が今後進むべき方向性について言及してくれていますので、該当部分を以下に引用します。

「現在の日本の建築用木材は量だけ見れば需要と供給はほぼバランスが取れています。近年木材自給率が上昇してきたのには、戦後植林された人工林が伐採適齢期を迎えたことと建設需要が人口減少により低下したことにあります。しかし、これから成長して伐採期を迎える人工林は15年後に現在の半分、20年後には1/3にまで減る見通しで将来的な安定供給は非常に危ういと言えます。そこで考えるべきは、大量にある伐採適齢期の立木を樹齢50年で一斉に伐採しようとしたりせず、これは樹齢55年で、それは60年で、あれは80年でと、未来の木材不足を補うためにある一定量を取り置き、段階的に出していくことです。これにより市場に多量の原木が供給されることによる値崩れを防ぐこともできます。また、木材は嵩張るため効率的なサプライチェーンは地産地消を前提とすべきです。地域ごとに森林産業城下町を形成し、各地の環境と経済の持続性を担保するのです。」

このようなことを実現するためには、なによりもこの業界における労働力の確保が最重要課題となります。

これは「農業」についても全く同じですが、食料や住宅といった人間の生活に直結する部分についてはその業界が補助金頼りの経営意欲喪失状態から脱却することを最低条件としつつも、ある程度のコストを負担する国民的理解も必要となると強く思いました。

 

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